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リチウムイオン電池搭載製品の出火危険

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右矢印
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充電していたカメラ用バッテリーからの出火状況 火炎が噴出している状況

火災発生状況

リチウムイオン電池を搭載した製品から出火する火災が多く発生しています。出火要因をみると、使用者の明らかな誤使用(分解、衝撃、充電方法誤り等)により出火する火災の他に、製品の欠陥により製品から突然出火する火災も発生しています。

図1 リチウムイオン電池関連火災状況(最近10年間)
図2 出火要因別状況(令和4年中)

近年の火災状況

リチウムイオン電池関連火災状況(最近10年間)をみると、・令和4年中は150件発生し、過去最多となっており、死者は1名、負傷者は42名発生しています。発生した火災の約14%が部分焼以上の延焼火災に拡大しています。

表1 リチウムイオン電池関連火災状況(最近10年間)
年別 火災件数 損害状況
合計 建物 車両 その他 焼損床面積
(u)
焼損表面積
(u)
死者 負傷者
小計 全焼 半焼 部分焼 ぼや
25年 12 12 - 1 2 9 - - 70 7 - 6
26年 19 18 - - 3 15 - 1 11 6 - 6
27年 26 21 - - 3 18 3 1 2 53 - 3
28年 55 48 - - 6 42 2 2 77 40 - 22
29年 56 47 - - 5 42 7 5 32 41 - 4
30年 82 69 - 1 4 64 6 7 74 40 - 10
元年 102 95 1 1 11 82 2 5 400 257 - 12
2年 104 93 - 2 11 80 5 6 200 195 - 22
3年 141 124 5 5 16 98 6 11 860 289 - 30
4年 150 124 4 - 17 103 10 16 513 109 1 42

注1 リチウムイオン電池関連火災とは、リチウムイオン電池を搭載した製品(差込みプラグ及び器具コードを除く)から出火した火災をいう。

注2 リチウムイオン電池関連火災には、ごみ回収中のごみ収集車から出火した火災及びごみ処理関連施設(業態が一般廃棄物処理業及び産業廃棄物処理業)から出火した火災を除く。

製品用途別の火災状況

令和4年中における製品用途別の火災状況をみると、モバイルバッテリーから出火した火災が最多で、次にスマートフォン、掃除機となっています。出火した製品は少なくとも33種類あり、多種にわたっています。

図3 製品用途別火災状況(令和4年中)

※その他の内訳は、ヘアアイロン、電動ガンバッテリー、ラジコンバッテリー、送風機、スマートウォッチ、電動エアポンプ、電動ゴーカート、電動モップ、バランススクーター、高圧洗浄機、ルーター、防犯カメラ用モニター、加熱式たばこ、美顔器、バイク用バッテリー、自動車用バッテリー、電動キックボード、オーディオプレーヤー、カードリーダー(各1件)。

製品用途別の出火要因

令和4年中に発生した火災の製品用途別の出火要因をみると、分解等が19件(12.7%)、衝撃等が12件(8.0%)、充電方法誤りが8件(5.3%)発生しています。また、製品の欠陥により出火した火災が17件(11.3%)発生しています。出火要因が特定できないものは87件(58.0%)となっており、その内17件(19.5%)が非純正バッテリーによるものです。

表2 出火要因別火災状況(令和4年中)
出火要因 合計 モバイルバッテリー 携帯電話機 掃除機 電動工具 電動アシスト付自転車 ポータブル電源 ワイヤレスイヤホン ノートパソコン LED タブレット 電気シェーバー ジューサー 釣り竿用電動リール 電子決済用端末 その他 不明
合 計 150(20) 35 16(2) 13(9) 12(8) 12 7 6 6 5 3 2 2 2 2 19(1) 8
分解等 19(1) 3 7(1) - - - - - 3 - 2 - - - - 2 2
製品の欠陥
(リコール含む)
17(1) - 1 2(1) - 7 2 2 - 1 - - - - - 2 -
衝撃等 12 1 4 - 1 - - - - 1 - - - - - 2 3
充電方法誤り 8 - - 1 - 1 1 - - - - 2 - - - 3 -
その他 7(1) 1 - 1(1) - - - - 1 - - - - 1 1 2 -
特定できない 87(17) 30 4(1) 9(7) 11(8) 4 4 4 2 3 1 - 2 1 1 8(1) 3

注 ( )内数字は、非純正バッテリーから出火した件数を内数で示しています。

出火した製品の入手時期等について

令和4年中に発生した火災について、出火した製品の入手時期等をみると、入手時期が1年未満の製品から出火した火災は24件(16.0%)で最多となっています。

表3 出火要因別商品の入手時期(令和4年中)
出火要因 合計 製品の入手時期
1年未満 2年未満 3年未満 4年未満 5年未満 6年未満 6年以上 不明
合 計 150 24 19 15 11 9 11 6 55
分解等 19 1 1 - 1 - 3 1 12
製品の欠陥
(リコール含む)
17 2 1 5 1 2 4 - 2
衝撃等 12 1 2 1 - - - - 8
充電方法誤り 8 3 1 - 1 - - - 3
その他 7 - - 1 1 - 1 1 3
特定できない 87 17 14 8 7 7 3 4 27

出火前の製品の状況

令和4年中に発生した火災について、出火前の製品の状況をみると、出火前に何らかの異常がある製品から出火した火災は33件(22.0%)です。出火時の充電状況は、充電中が72件(48.0%)、非充電中(待機中含む)が57件(38.0%)、使用中が8件(5.3%)となっています。

表4 出火要因別出火前の製品異常および出火時の充電状況(令和4年中)
出火要因 合計 出火前の製品異常 出火時の充電状況
特になし 充電できない ふくらみ 発熱 その他 不明 充電中 非充電中 使用中 その他 不明
合 計 150 90 14 6 2 11 27 72 57 8 2 11
分解等 19 8 1 3 - 3 4 - 18 - - 1
製品の欠陥
(リコール含む)
12 11 2 - - 1 3 10 6 1 - -
衝撃等 8 5 - - - 1 6 - 7 - 2 3
充電方法誤り 7 6 - - - 2 - 8 - - - -
その他 17 3 1 1 - 1 1 4 3 - - -
特定できない 87 57 10 2 2 3 13 50 23 7 - 7

出火直前の使用状況

令和4年中に発生した火災について、出火直前の使用状況をみると、1週間以内に使用しているものが86件(57.3%)。また、初めて使ったものが4件(2.7%)発生しています。また、出火した製品の入手経路はネット通販が62件(41.3%)。モバイルバッテリーの入手経路は35件中ネット通販が13件(37.1%)で最多となっています。

表5 出火要因別出火直前の使用状況(令和4年中)
出火要因 合計 出火直前の使用状況
初めて使用 1週間以内 1週間〜
3か月以内
3か月〜
半年以内
半年〜
1年以内
1年以上 不明
合 計 150 4 86 13 3 1 8 35
分解等 19 - 10 - - - 2 7
製品の欠陥
(リコール含む)
17 1 15 - - - - 1
衝撃等 12 - 4 - - - 1 7
充電方法誤り 8 - 4 2 - - - 2
その他 7 - 4 1 - - - 2
特定できない 87 3 49 10 3 1 5 16
表6 出火した製品の入手経路
入手経路 合計 モバイルバッテリー 携帯電話機 掃除機 電動工具 電動アシスト自転車 ポータブル電源 ワイヤレスイヤホン ノートパソコン LED タブレット 電気シェーバー ジューサー 釣り竿用電動リール 電子決済用端末 その他 不明
合 計 150 35 16 13 12 12 7 6 6 5 3 2 2 2 2 19 8
ネット通販 62 13 5 8 6 3 4 3 1 2 2 2 2 1 - 10 -
家電量販店 17 7 2 2 - 2 - 1 1 1 - - - - - 1 -
純正メーカーから
直接購入
7 - 2 - - 2 1 - 1 - - - - - 1 - -
人からもらった 7 3 - 1 1 - - 1 - - - - - - - 1 -
その他 12 2 2 - 1 1 - - - - - - - 1 - 1 4
不明 45 10 5 2 4 4 2 1 3 2 1 - - - 1 6 4

火災のメカニズム

リチウムイオン電池は、繰り返し充電、放電できる電池のことで、二次電池の一つです。この電池は、主に小型で大量の電力を必要とする製品(スマートフォン、コードレス掃除機、ノートパソコンや電動工具など)に使用され、他の二次電池と比べて高容量、高出力、軽量という特徴があります。

リチウムイオン電池は、電解液として可燃性の有機溶剤を使用しているため、衝撃等により内部の正極板と負極板が短絡し、急激に加熱後、揮発した有機溶剤に着火して出火することがあります。

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火災事例

モバイルパソコンからバッテリーを取り外す際に出火した

共同住宅の居住者が、モバイルパソコンのバッテリーが膨らんでいたため、バッテリーを工具で取り外そうとした際にバッテリーを損傷させたことでバッテリーセルが内部短絡し出火したものです。

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モバイルパソコンの焼損状況
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バッテリーセルの焼損状況

非純正品のACアダプタに接続したバッテリーから出火した火災

住宅の居室内で充電していた電動アシスト付自転車用バッテリー(以下、バッテリーという)から出火したものです。居住者が純正品のACアダプタとは出力が異なるACアダプタを使用し、バッテリーを充電したことにより電気的不具合が発生し、バッテリーセルが内部短絡し出火しました。

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出火箇所の状況
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バッテリーの焼損状況

社告品のバッテリーを使用して出火した火災

共同住宅6階の居室で、充電中の電動アシスト付自転車用バッテリー(以下「バッテリー」という。)のセル内部で短絡して出火したものです。この火災で4人の傷者が発生しています。出火したバッテリーは、バッテリー内部の劣化により発火の危険性があるとの理由でリコールが実施されていました。

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出火箇所の状況
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バッテリーの焼損状況

新築工事現場で充電中のバッテリーが出火した火災

新築工事現場の建物内において作業で使用する電動工具のバッテリーを充電していたところ、何らかの要因でバッテリーセルが内部短絡し出火したものです。出火したバッテリーは、電動工具と同じメーカーの純正品ではなく、互換性がある海外メーカーの非純正品バッテリーでした。

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出火箇所の状況
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バッテリーの焼損状況

非純正品の充電器でバッテリーを充電中に出火した火災

事務所の倉庫内でビデオカメラ用のバッテリーを充電していたところ、何らかの要因でバッテリーセルが内部短絡し出火したものです。出火したバッテリーの充電に使用した充電器は、仕様上の専用の充電器ではありませんでした。

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バッテリーの焼損状況

(防犯カメラ映像)

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火炎が噴出している状況

(防犯カメラ映像)

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バッテリーの焼損状況

火災を防ぐために

  1. 使用する前に取扱説明書をよく確認する。
  2. 衝撃を与えないよう適切に取り扱い、むやみに分解しない。
  3. 製造メーカーが指定する充電器やバッテリーを使用する。
  4. 充電器の接続部が合致するからといって、充電電圧を確認せずに使用しない。
  5. 膨張、充電できない、バッテリーの減りが早くなった、充電中に熱くなるなどの異常がある場合は使用をやめ、製造メーカーや販売店に相談する。
  6. 製造メーカーの問合せ先の記載がない製品や販売店や製造メーカーの連絡先に連絡してもつながらない製品もあるので、製品を購入する際には慎重に検討する。
  7. 処分する際は、製品の取扱説明書をよく確認する。
  8. 不用品を処分する際は、地域のごみ回収方法をよく確認する。