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東京消防庁ライブラリー消防雑学辞典
消防雑学事典
消防活動のライフライン

 今日の高度に発達した情報・通信化社会では、電波を用いて映像・音声・信号・符号などの情報を送受信する無線通信は、有線通信に対応するものとして重要な役割を果たしています。
 一般的に電波は、光や音に比べて遠方まで到達することができるため、遠距離や海などを越えての通信に適しており、また、自動車、船舶、航空機など移動するものからの唯一の通信手段に用いられています。無線通信には、無線電信、無線電話、レーダー、放送、データ通信などの種類があります。
 無線の歴史を見てみますと、イタリアの電気技術者M・マルコーニが1895年に無線通信装置を発明し、翌年企業として成り立たせるため、イギリスに渡って特許を取得、1857年に、マルコーニ無線会社を創立させたことに始まるといわれています。
 日本における無線の導入は、明治時代の中頃で、当初、海軍が力を入れていました。特に、日露戦争の日本海海戦(明治38年5月)で、信濃丸から発せられた無線(電報)による「敵艦見ゆ」という信号が有名です。このことを契機に、無線の有用性を多くの人たちが認識したといわれています。
 これ以前、ことに江戸時代までは、武士などが至急親書を遠方に届けるのに、飛脚や早駕籠などに頼っていました。たとえば、赤穂浪士が吉良邸に討ち入るきっかけとなった、元禄14(1701)年の「殿中刃傷事件」が赤穂に伝えられたのは、早駕籠で事件発生後5日たってのことだったといわれています。通信手段が発達している今日では、瞬時にして伝わるところですが。
 また、1912年4月14日、英国の豪華客船タイタニック号が、ニューヨークに向かう処女航海中、大西洋上で氷山と衝突し沈没した際に、無線電信で救助を求めることによって、乗客など700人近くの人が救助されたことは、当時、奇跡的な出来事として、その価値が大いに高まりました。
 第二次世界大戦時には、防空対策としてレーダーが実用化され、終戦後はマイクロ波を利用する時代となり、またトランジスタが開発され、無線通信の送受信機の小型化・携帯化が可能となりました。
 現在東京消防庁では、東京都23区内からの119番通報は、千代田区大手町の本部庁舎に設置されている「災害救急情報センター」が、また、多摩地域内の119番通報は、立川市に設置されている立川消防合同庁舎に付設された「多摩災害救急情報センター」が受信し、各消防署に消防ポンプ車、救急車などの出場を指令しています。
 このセンターでは無線を利用して、災害現場などに出場している消防ポンプ車や救急車などに対して、現場活動に必要な情報をタイムリーに送信し、効果的な消防活動を支援しています。一方、災害現場からは本センターに対し、災害状況の報告や応援の要請などが行われています。
 次に、東京消防庁が初めて無線を導入した時期と、現在使用している無線の種類を紹介します。
 わが国で消防業務に無線を導入したのは、東京消防庁が初めてで、昭和25(1950)年11月8日、、無線の基地局を1局(麹町消防署に設置)と移動局を5局(日本橋・芝・豊島・下谷・向島消防署)設置し、運用を開始したのがはじまりです。
 その後幾多の技術革新により、無線通信業務が開始された時とは比較にならないほど、無線通信に関しての技術は進歩発展を遂げています。今日ではこれらの技術を導入して最善の無線通信業務を行っています。
 現在、東京消防庁の無線通信系は、警防本部(災害救急情報センター)と出場隊間を結ぶ移動通信系、災害現場における指揮者と隊員間を結ぶ携帯通信系、本部庁舎、方面本部、消防署および出張所の消防庁舎間を結ぶ固定通信系、その他の通信系に分類されており、これを図にしますと次のようになります。

消防無線通信網
消防無線通信網

 次に、図に記したいくつかの無線について概要を述べます。
 消防無線とは、災害救急情報センターと、ポンプ車、化学車、はしご車などの消防車両との間および消防車両間を結ぶ通信系のことで、全ての消防車両には送受信が行える車載無線機が備え付けられています。
 無線の波としては、東京消防庁管轄下全域で使用する東京消防庁共通波、データ波(ファクシミリの伝送等で使用)、全国共通波(大規模な災害が発生した時、全国の消防機関が相互応援時に使用)に分かれています。

携帯無線機
携帯無線機  救急無線とは、救急隊と災害救急情報センター並びに救急病院との間を結ぶ通信系です。複信方式で通信が行えることから、救急隊と医療機関との直接電話接続、観察情報の送信、病院情報の検索などができ、救急患者の救護活動が的確に行えます。
 水上無線とは、災害救急情報センターと消防艇との間を結ぶ通信系です。消防艇は、東京湾内を航行中でも災害救急情報センターと交信を行うことから、水上無線系の無線機には、150メガヘルツ帯の消防無線の電波に比べて、到達距離が長い30メガヘルツ帯の周波数が使用されています。
 無線ファクシミリとは、有線ファクシミリの電話線に当たる部分を、無線回線に置き換えたものです。災害現場の状況などを災害救急情報センターに電送し、また、災害救急情報センターから災害現場に消火活動などに必要な資料を電送して、消防活動を支援するために用いられています。
 航空無線とは、災害救急情報センターと消防ヘリコプター間およびヘリコプター相互間を結ぶ通信系です。
 ヘリコプターテレビ電送システムとは、山林火災や地震災害などのように災害現場が広範囲にわたるものや、高層建物火災のように地上からでは災害状況の把握が困難な時に、ヘリコプターに搭載したカメラで上空から撮影した映像を、災害救急情報センターに電送して、災害活動を支援するシステムです。
 携帯無線とは、災害現場などにおいて、各指揮者および消防隊員が携帯して、相互に指揮命令や情報連絡の伝達手段として使用している通信系です。災害現場以外に、予約査察、消防特別警戒、消防訓練を行う時などにも使用しています。
 このような各種の無線を用いて、災害救急情報センターと災害現場に出場した部隊・指揮者・隊員相互間で、指揮、命令、情報の交換、報告などがスムーズに行われています。防火水槽や消火栓などの消防水利が、消火活動を行う上での大切な命綱であると同じように、消防無線も円滑な消防活動を行う上での大切な命綱なのです。
車載無線機
車載無線機



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