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救急搬送データからみる高齢者の事故

東京消防庁管内1)では、平成28年中、日常生活の中における事故(交通事故を除く。)により、約13万2千人が救急搬送されています。救急搬送の半数以上は高齢者2)で、平成24年から平成28年までの5年間に32万人以上の高齢者が日常生活の中の事故で救急車により医療機関へ搬送されています。

日常生活の中での思わぬケガが生活に影響を及ぼすこともあり、本人だけでなく家族や地域で事故防止を考えることは大変重要です。

1) 東京都のうち、稲城市、島しょ地区を除く地域
2) 65歳以上

高齢者の事故防止ポイント

事故の実態や傾向を知り本人、家族、地域でそれぞれができる事故防止対策を実施しましょう。
 加齢に伴い様々な身体機能が変化します(心肺機能の低下、筋力の低下、視覚・聴覚の低下、嚥下機能の低下など)。身体機能の変化について知り、事前の事故防止対策をしましょう。

キュータ

ころぶ事故を防ぐために(転倒防止)

  • 段差をなくしましょう。
  • 段差(段の先端部)を分かりやすくしましょう。
  • 足元を十分に明るくしましょう(足元灯・照明器具の設置など)。
  • 滑り止めをしましょう(階段・廊下・玄関先など)。
  • 歩行を補助しましょう(手すりなど)。
  • 継続できる、体力にあった運動をしましょう(散歩など)。
  • ころぶ原因となるものは取り除きましょう(整理・整頓)。

事故全体の約8割がころぶ事故によるものです!
ころぶ事故を防ぐために(転倒防止)

落ちる事故を防ぐために

  • 階段がある家庭では、階段には握りやすく滑りにくい手すりを設置しましょう。
  • 滑り止めマットを敷くなど事故防止対策をとりましょう。

落ちる事故を防ぐために

おぼれる事故を防ぐために

  • 入浴は思いのほか身体に負担をかけることを知りましょう。
  • 長湯・高温浴は避けましょう。
  • 飲酒後の入浴はやめましょう。
  • 入浴時には家族に知らせ、家族はこまめに声をかけましょう。

おぼれる事故を防ぐために

ものがつまる・ものが入る・誤って飲み込む事故を防ぐために(窒息・誤飲防止)

  • 小さく切って、良く噛みましょう。
  • お茶など水分を取りながら食事しましょう。

※ 以下「ものがつまる等」という。

窒息・誤飲防止

1 高齢者の日常生活事故発生状況

(1)高齢者の事故はどのくらい発生しているの?

平成24年からの5年間を見ると、高齢者の事故は年々増加しています。平成24年には、高齢者の救急搬送は59,401人でしたが、平成28年には12,797人増加し、72,198人が救急搬送されています(図1―1)。

図1−1:日常生活事故での高齢者の救急搬送人員の推移
図1−1:日常生活事故での高齢者の救急搬送人員の推移

(2)重症度はどれくらいなの?

平成24年からの5年間で救急搬送された高齢者の初診時程度別では、4割以上が入院の必要がある中等症以上と診断されています(図1−2)。

また、入院の必要がある中等症以上の割合は、高齢になるにつれて増加しています(図1−3)。

図1−2:高齢者の初診時程度別救急搬送人員

軽 症:入院の必要がないもの
中等症:生命の危険はないが、入院の必要があるもの
重 症:生命の危険が強いと認められたもの
重 篤:生命の危険が切迫しているもの
死 亡:初診時に死亡が確認されたもの

図1−2:高齢者の初診時程度別救急搬送人員

図1−3:年齢別救急搬送人員と中等症以上の割合
図1−3:年齢別救急搬送人員と中等症以上の割合

(3)どのような事故で救急搬送されているの?

事故発生時の動作分類では、「その他」や「不明」を除くと、「ころぶ」事故が全体の約8割を占め、次いで「落ちる」事故が多く発生しています。

日常生活の中での転倒や転落による事故が多く発生しており、この2つの事故だけで5年間に約26万人の高齢者が医療機関に救急搬送されています(図1−4)。

図1−4:事故種別ごとの高齢者の救急搬送人員
図1−4:事故種別ごとの高齢者の救急搬送人員

また、事故種別ごとに入院が必要とされる中等症以上の割合をみると、「おぼれる」事故の97.9%が最も高く、次いで「ものがつまる等」による事故が高くなっています(図1−5)。

図1−5:事故種別ごとの高齢者の救急搬送人員と中等症以上の割合
図1−5:事故種別ごとの高齢者の救急搬送人員と中等症以上の割合

2 平成28年中の高齢者の事故と高齢者に多い事故

(1)平成28年中の高齢者の事故による救急搬送状況

平成28年中に日常生活の事故で救急搬送された高齢者は72,198人で、年齢ごとに人口10万人あたりの救急搬送人員をみると、年齢が高くなるにつれて救急搬送人員が増加していることが分かります(図2−1)。

図2−1:高齢者の年齢別救急搬送人員と人口10万人あたりの救急搬送人員(平成28年中)
図2−1:高齢者の年齢別救急搬送人員と人口10万人あたりの救急搬送人員(平成28年中)

平成28年中の事故発生時の動作分類では、過去5年間と同様に「ころぶ」事故が全体の約8割を占め、次いで「落ちる」事故が多く発生しています(図2−2)。

また、事故種別と入院が必要とされる中等症以上の割合では、「おぼれる」事故の99.3%が最も高く、次いで「ものがつまる等」による事故が52.3%と高くなっています(図2−3)。

図2−2:事故種別ごとの高齢者の救急搬送人員(平成28年中)
図2−2:事故種別ごとの高齢者の救急搬送人員(平成28年中)

図2−3:事故種別ごとの高齢者の救急搬送人員と中等症以上の割合(平成28年中)
図2−3:事故種別ごとの高齢者の救急搬送人員と中等症以上の割合(平成28年中)

(2)高齢者の「ころぶ」事故の発生状況

高齢者の事故の中で最も多いのが「ころぶ」事故で、毎年多くの高齢者が「ころぶ」事故でケガをして救急搬送されています。その数は年々増加し、平成28年には51,488人が救急搬送されています(図2−4)。

また、人口10万人あたりの救急搬送人員をみてみると、年齢が高くなるにつれて増加しており、高齢になるほど「ころぶ」ことがケガにつながっています(図2−5)。

図2−4:「ころぶ」事故による高齢者の年別救急搬送人員
図2−4:「ころぶ」事故による高齢者の年別救急搬送人員

図2−5:「ころぶ」事故による高齢者の年齢別救急搬送人員と人口10万人あたりの救急搬送人員(平成28年中)
図2−5:「ころぶ」事故による高齢者の年齢別救急搬送人員と人口10万人あたりの救急搬送人員(平成28年中)

救急搬送時の初診時程度では軽症が最も多いですが、約4割の高齢者が入院の必要がある中等症以上と診断されています(図2−6)。

図2−6:「ころぶ」事故による高齢者の初診時程度別救急搬送人員(平成28年中)

軽 症:入院の必要がないもの
中等症:生命の危険はないが、入院の必要があるもの
重 症:生命の危険が強いと認められたもの
重 篤:生命の危険が切迫しているもの
死 亡:初診時に死亡が確認されたもの

図2−6:「ころぶ」事故による高齢者の初診時程度別救急搬送人員(平成28年中)

事故の発生場所では、「住宅等居住場所」が最も多く、次に「道路・交通施設」となっています。

「住宅等居住場所」の28,797人を屋内と屋外に分けてみると、屋内での発生が26,400人で9割以上を占めています。また、住宅等の屋内の発生だけで、「ころぶ」事故全体の5割以上を占めています(図2-7)。

「住宅等居住場所」で「ころぶ」事故が多く発生した場所を見てみると、「居室・寝室」が最も多く、次に「玄関・勝手口」、「廊下・縁側」となっています(表2−1)。

図2−7:高齢者の「ころぶ」事故の発生場所(平成28年中)

図2−7:高齢者の「ころぶ」事故の発生場所(平成28年中)

表2−1:住宅等居住場所における高齢者の「ころぶ」事故の発生場所上位5位(平成28年中)

  1位 2位 3位 4位 5位
事故発生場所 居室・寝室 玄関・勝手口 廊下・縁側 トイレ・洗面所 台所・調理場・ダイニング
救急搬送人員 19,580人 2,740人 1,965人 913人 752人

(3)高齢者の「落ちる」事故の発生状況

高齢者の事故の中で「ころぶ」事故に次いで多いのが「落ちる」事故で、毎年5,000人以上が救急搬送されています。

平成28年は6,863人と5年間で最も多く救急搬送されています(図2−8)。

また、人口10万人あたりの救急搬送人員をみると、年齢が高くなるにつれて増加していることが分かります(図2−9)。

図2−8:「落ちる」事故による高齢者の年別救急搬送人員
図2−8:「落ちる」事故による高齢者の年別救急搬送人員

図2−9:「落ちる」事故による高齢者の年齢別救急搬送人員と人口10万人あたりの救急搬送人員(平成28年中)
図2−9:「落ちる」事故による高齢者の年齢別救急搬送人員と人口10万人あたりの救急搬送人員(平成28年中)

救急搬送時の初診時程度では4割以上の高齢者が入院の必要がある中等症以上と診断されています(図2−10)。

図2−10:「落ちる」事故による高齢者の初診時程度別救急搬送人員(平成28年中)

軽 症:入院の必要がないもの
中等症:生命の危険はないが、入院の必要があるもの
重 症:生命の危険が強いと認められたもの
重 篤:生命の危険が切迫しているもの
死 亡:初診時に死亡が確認されたもの

図2−10:「落ちる」事故による高齢者の初診時程度別救急搬送人員(平成28年中)

事故の発生場所では、7割以上が「住宅等居住場所」で発生しています(図2−11)。

また、事故原因で多かったものをみると、最も多いのが「階段」で「落ちる」事故であり、全体の約5割を占めています。(表2−2)。

図2−11:高齢者の「落ちる」事故の発生場所(平成28年中)
図2−11:高齢者の「落ちる」事故の発生場所(平成28年中)

表2−2:高齢者の「落ちる」事故の事故原因上位5位(平成28年中)

  1位 2位 3位 4位 5位
事故発生場所 階段 ベッド 椅子 脚立・踏み台・足場 エスカレーター
救急搬送人員 3,354人 1,061人 499人 399人 261人

(4)高齢者の「ものがつまる等」による事故の発生状況

高齢者の事故の中で重症度の高い事故の1つが「ものがつまる等」による事故です。

平成28年は、1,703人の高齢者がものをつまらせる、誤って飲み込んでしまうことにより救急搬送されています(図2−13)。

また、人口10万人あたりの救急搬送人員をみると、80歳代中盤から年齢が高くなるにつれて増加しています。(図2−14)。

図2−13:「ものがつまる等」による事故による高齢者の年別救急搬送人員
図2−13:「ものがつまる等」による事故による高齢者の年別救急搬送人員

図2−14:「ものがつまる等」の事故による高齢者の年齢別救急搬送人員と人口10万人あたりの救急搬送人員(平成28年中)
図2−14:「ものがつまる等」の事故による高齢者の年齢別救急搬送人員と人口10万人あたりの救急搬送人員(平成28年中)

救急搬送時の初診時程度では5割以上の高齢者が入院の必要がある中等症以上と診断され、449人が生命の危険がある重症以上と診断されています(図2−15)。

図2−15:「ものがつまる等」の事故による高齢者の初診時程度別救急搬送人員(平成28年中)

軽 症:入院の必要がないもの
中等症:生命の危険はないが、入院の必要があるもの
重 症:生命の危険が強いと認められたもの
重 篤:生命の危険が切迫しているもの
死 亡:初診時に死亡が確認されたもの

図2−15:「ものがつまる等」の事故による高齢者の初診時程度別救急搬送人員(平成28年中)

事故の発生場所では、9割以上が「住宅等居住場所」で発生しています(図2−16)。

また、製品が判明したもののうち、事故の発生原因で最も多かったものは「おかゆ類」で、次に「包み・袋」、「餅」、「薬剤等」と続いています。特別な食品ではなく、普段の食事の中でも事故は発生しています(表2−3)。

図2−16:高齢者の「ものがつまる等」の事故発生場所(平成28年中)
図2−16:高齢者の「ものがつまる等」の事故発生場所(平成28年中)

表2−3:高齢者の「ものがつまる等」の事故原因上位5位(平成28年中)

  1位 2位 3位 4位 5位
事故発生場所 おかゆ類 包み・袋 薬剤等 御飯
救急搬送人員 110人 102人 88人 85人 79人

(5)高齢者の「おぼれる」事故の発生状況

高齢者の事故の中で最も重症化しやすい事故が「おぼれる」事故です。5年間で2,849人が救急搬送され、入院の必要がある中等症以上と診断された高齢者は、毎年9割を超えています(図2−18)。

また、平成28年中の月別の搬送人員では、12月から3月に多く発生していることが分かります(図2−19)。

図2−18:「おぼれる」事故による高齢者の年別救急搬送人員と中等症以上の割合
図2−18:「おぼれる」事故による高齢者の年別救急搬送人員と中等症以上の割合

図2−19:「おぼれる」事故による高齢者の月別救急搬送人員(平成28年中)
図2−19:「おぼれる」事故による高齢者の月別救急搬送人員(平成28年中)

救急搬送時の初診時程度では、他の事故と異なり中等症以上の割合が99.3%と非常に高く、約9割の478人が生命の危険がある重症以上と診断されています(図2−20)。

図2−20:「おぼれる」事故による高齢者の初診時程度別救急搬送人員(平成28年中)

約9割が重症以上!

軽 症:入院の必要がないもの
中等症:生命の危険はないが、入院の必要があるもの
重 症:生命の危険が強いと認められたもの
重 篤:生命の危険が切迫しているもの
死 亡:初診時に死亡が確認されたもの

図2−20:「おぼれる」事故による高齢者の初診時程度別救急搬送人員(平成28年中)

事故の発生場所では、「住宅等居住場所」が495人と9割以上を占め、その内詳細な発生場所を見るとそのほとんどが浴槽で発生しています(図2−21)。

図2−21:高齢者の「おぼれる」事故の発生場所(平成28年中)

図2−21:高齢者の「おぼれる」事故の発生場所(平成28年中)

3 平成28年中の高齢者の事故事例

【ころぶ事故】

【落ちる事故】

【ものがつまる等による事故】

【おぼれる事故】