東京消防庁管内1)で、平成27年から令和元年2)までの5年間に、5歳以下の子供6,071人が、窒息や誤飲等3)により医療機関に救急搬送されています。飲み込んだものによっては、体の組織を破壊するなど重大な事故となる恐れもあります。
乳幼児の成長段階によって、窒息や誤飲の多いものが違います。子どもの成長を知り、窒息や誤飲の危険性を再確認し、事故から子どもを守りましょう。
その他、過去に重症または重篤と診断された事例として煎餅、りんご、硬貨、ビー玉、洗濯用洗剤などがあります。
※中等症とは生命の危険はないが入院を要するもの
毎年1,000人を超える乳幼児が、ものを喉に詰まらせたり、危険なものを飲み込んだりして、救急搬送されています。令和元年中は昨年に比べ減少していますが、依然として多くの乳幼児が救急搬送されています(図1)。
図1 年別救急搬送人員
年齢別では、0歳児の救急搬送が最も多く、成長とともに減少しています(図2-1)。0歳児は、7か月から増加し、9か月が最も多く救急搬送されています(図2-2)。
図2-1 年齢別救急搬送人員
図2-2 0歳児の年齢(か月)別救急搬送人員
時間帯別では、17時台から21時台に多く救急搬送されています(図3)。
図3 時間帯別救急搬送人員
発生場所別では、住宅等の居住場所が全体の9割以上を占めています(図4)。
図4 場所別救急搬送人員
関連器物別では、食品・菓子や玩具が多いですが、乳幼児の窒息や誤飲に係る製品等は、包み・袋やたばこ、日用品等、様々です(図5-1)。
0歳児はお菓子の包みやペットボトルのラベルなど「包み・袋」が最も多くなっています(図5-2)。
1歳児になると「食品・菓子」に次いで「たばこ」の誤飲が多くなります(図5-3)。
2歳児、3-5歳児は「食品・菓子」に次いで「玩具」が多くなっています(図5-4、図5-5)。
図5-1 関連器物別救急搬送人員(0歳-5歳)
図5-2 関連器物別救急搬送人員(0歳)
図5-3 関連器物別救急搬送人員(1歳)
図5-4 関連器物別救急搬送人員(2歳)
図5-5 関連器物別救急搬送人員(3歳-5歳)
胃から逆流すると、灯油の蒸気が気管から肺に入り、ひどい肺炎を起こします。
キャンドルオイルもこれと同じ状況で、肺炎を起こします。
ボタン電池は放電能力が高いため、非常に短時間で消化管壁に潰瘍を作ります。
また、直径が大きく食道にとどまる可能性が高いため、誤飲すると死に至るおそれがあります。
乳幼児がボタン電池を誤飲した時に食道で何がおこっているか、国立研究開発法人産業技術総合研究所が作成した映像により危険性を理解することができます。下記のホームページ(下記のURL)からご覧いただけます。
乳幼児のボタン電池誤飲映像
http://kd-wa-meti.com/ButtonCell.html
電池は、鍵のかかる引き出しや子供の手が届かない場所でパッケージに入れたまま保管する。
子供から見えるところで電池交換をしない。また、電池交換時に短時間放置する「ちょい置き」も絶対にしない。
電池使用製品を購入する際には、電池収納部が子供でも簡単に開けられたり、落下などの衝撃により電池が飛び出すような構造になっていないことなどを確認し、安全対策が施された商品を選択する。
(東京都の注意喚起リーフレット「コイン形電池・ボタン形電池を子供にさわらせないで!」より)
※コイン形電池等とは、コイン形リチウム電池及びその他のボタン形電池の一次電池を指す。
(東京都商品等安全対策協議会「子供に対するコイン形電池等の安全対策」より)
誤飲や窒息が始まる時期を知っておく必要があります。早い子では、5ヵ月から「物をつかむ」、つかんだら「口に入れる」行動が見られます。
乳幼児はトイレットペーパーの芯(39o)を通る大きさのものなら、口の中に入れてしまい飲み込む危険性があります。
乳幼児は、大きな食べ物を丸飲みしたり、びっくりして飲み込んでしまい窒息することがあります。
成長段階に応じ、食べ物は適切な大きさに切る、つぶすなどして食べさせ、食事中に大きな声で呼ぶなど乳幼児をびっくりさせるようなことはやめましょう。
監修:緑園こどもクリニック院長 山中 龍宏