♦新入社員等に対する防火・防災教育の推進
消防法では、一定規模以上の建物などに、火災予防対策などの中核を担う防火管理者を選任し、消防計画を作成することを義務付けています。その消防計画の中には、組織的に火災・地震などの災害に対応するための自衛消防の組織の編成や、従業員の災害時の任務等が定められています。事業所では、災害が発生した場合には、消防計画に基づき、119番通報、初期消火、避難誘導、応急救護などの自衛消防活動を行うことになります。
4月は、社会人としてスタートする方、人事異動で新任地に就く方、第二の職場で再スタートする方など、事業所の人事配置が大きく変わり、事業所の自衛消防活動の能力が低下してしまいがちです。事業所の安全・安心を守るために、新たな職場で働く従業員に対して、防火・防災教育を徹底し、実態にあわせて、自衛消防の組織を見直していくことが必要になります。
♦防火・防災教育
新入社員は、仕事はもちろんのこと、まだ建物内の様子もわかりません。火災発生の危険がある場所や消火器、自動火災報知設備、避難器具などの消防用設備等の位置や使用方法、避難経路となる階段などの位置を十分に把握していないのが実情です。従業員全員が日常から火災予防を意識して行動し、いざというときには、自衛消防活動が円滑にできるように、「防火・防災教育」を実施しましょう。
防火・防災教育では、各事業所の消防計画を基に事業所の用途や建物の規模、構造などの特性を踏まえつつ、新入社員を含めた従業員全員に防火・防災管理上の役割等を具体的かつ十分に認識させることが必要です。
防火・防災教育の内容
- 火災の発生危険に関する事項
- 防火・防災管理制度のしくみ
- 消防用設備等の設置場所、機能、取扱い方法
- 防火・防災管理に関する従業員各自の任務及び責任の周知徹底
- 震災対策に関する事項
♦自衛消防活動と自衛消防の組織
- (1) 自衛消防活動の基本
火災や地震等の災害が発生した場合、人的又は物的な被害を最小限にとどめる ため、初期消火、通報連絡、避難誘導などの初動対応として自衛消防活動を行う必要があります。中でも炎や煙に近づくこととなる初期消火では、火元に近づきすぎて、炎にあおられたり、煙を吸ったりしてケガをする恐れがあります。初期消火中にケガをしないために、次のポイントに気をつけましょう。 - 初期消火時のポイント
- ◆ 消火器での初期消火は、吹き返しや燃えているものが飛び散ることがあるので注意しましょう。
- ◆ 燃えているところに近づきすぎず、適切な距離を保ち、初期消火しましょう。
- ◆ 煙は、熱気や有毒な成分を含んでいるので、注意しましょう。
- ◆ 避難経路を確保し、「出火室内が燃え広がっている」「天井などに火炎が伝達して燃え広がっている」状態では、無理をせずに避難をしましょう。
- ◆ 初期消火は、「ぬれた衣類等をかける」「寝具等をかける」「ビニールホースでの水道水をかける」「ふたをして消す」等をするのではなく、適切な消火器具、消火設備を使いましょう。
- (2) 自衛消防の組織
事業所では、自衛消防隊長をはじめ、通報連絡班や初期消火班、避難誘導班、応急救護班などの自衛消防の組織を消防計画に定めています。この時期には、新たな職場で働く従業員を加え、自衛消防の組織を見直し、災害に対応できる体制を整えておく必要があります。自衛消防の組織を見直した場合には、それぞれ自分の役割を確認し、与えられた任務を遂行できるようにしておきましょう(図1参照)。 - (3) 自衛消防訓練
消防法では、飲食店、物品販売店舗、ホテル、病院などの防火対象物(特定用途の防火対象物)の防火管理者に対して、年2回以上の消火及び避難訓練の実施を義務付けています。さらに、大規模な建物のうち、防災管理が必要な防火対象物の防災管理者に対しては、年1回以上の地震などの災害に対応した避難訓練も実施する必要があります。
また、その他の用途の事業所についても、消防計画に基づき定期的に自衛消防訓練を実施します。
自衛消防訓練を実施する場合には、事前にその旨を管轄消防署に自衛消防訓練通知書で通知します。
自衛消防訓練通知書は、東京消防庁ホームページURLからダウンロードできます。
http://www.tfd.metro.tokyo.jp(ホームページ内を以下のメニューに沿って進んでください。
「申請様式」⇒「②防火管理者・消防計画・訓練通知書・自動通報」⇒「5.自衛消防」⇒「№1 自衛消防訓練通知書」) - (4) 自衛消防訓練の進め方
- 実効性のある訓練を実施するために「事業所等の実態にあった訓練想定」を作りましょう。
- 可能な限り建物に設置されている消防用設備等を使用して実施しましょう。
- 旅館、ホテル、病院及び社会福祉施設などでは、夜間など職員の少ない時間帯を想定して実施しましょう。
- 訓練の後は、訓練方法や消防計画などに修正の必要がないか、必ず実施結果を検証し、今後の防火・防災管理に反映させるようにしましょう。
自衛消防訓練の実施に当たり、新入社員には、まず自衛消防の組織の中で自分の任務は何か、さらに、自分を指揮する自衛消防隊長、地区隊長が誰かなどを、周知しておきましょう。 - (5) 防災館を利用した自衛消防訓練
消火器や屋内消火栓の実放水訓練を行いたくても、適当な場所がなく実施できない場合があります。このような場合は、防災館で放水訓練を行いましょう。
都内3ヵ所にある防災館では、消火体験コーナーでの消火器や屋内消火栓の放水訓練や応急手当、地震、煙からの避難などの各種体験が行えるほか、防災ライブラリーや資料コーナーで防火・防災の知識、技術の向上を図ることができます。
なお、防災館での各種体験は「自衛消防訓練」として取り扱うことができますので、ぜひ防災館をご利用ください。(防災館を利用した自衛消防訓練を実施する場合も、自衛消防訓練通知書で通知してください。上記⑶参照。)
※避難訓練については、自分の建物で実施しましょう。
図1 自衛消防の組織の編成表(例)
池袋防災館 | 本所防災館 | 立川防災 | |
場所 | 豊島区西池袋2-37-8 | 墨田区横川4-6-6 | 立川市泉町1156-1 |
電話 | 03-3590-6565 | 03-3621-0119 | 042-521-1119 |
開館時間 | 午前9時~午後5時 | 午前9時~午後5時 | 午前9時~午後5時 |
休館日 | 毎週火曜日、第3水曜日、 年末年始 | 毎週水曜日、第3木曜日、 年末年始 | 毎週木曜日、第3金曜日、 年末年始 |
♦「防火管理実践ガイド」や「防火管理ポケットマニュアル」を活用しよう
東京消防庁では、事業所の防火管理を推進する上で参考になるように、防火管理制度の基本情報を集約した「防火管理実践ガイド」や従業員の教育用の資料として「防火管理ポケットマニュアル」を提供しています。是非、事業所の防火・防災教育にお役立てください。
東京消防庁のホームページで、「防火管理実践ガイド(PDFファイル)」及び
「防火管理ポケットマニュアル(PDFファイル)」を提供しています。
- 東京消防庁ホームページURLhttp://www.tfd.metro.tokyo.jp
(ホームページ内を以下のメニューに沿って進んでください。)
「トップページ」⇒「安全・安心」⇒「事業所向けアドバイス」⇒ 「防火管理実践ガイド」 「防火管理ポケットマニュアル」